
金魚の稚魚に最適な餌はブラインシュリンプです
金魚の稚魚にとって、栄養価が高く消化もしやすい餌として最もおすすめされているのがブラインシュリンプ(アルテミア)です。
ブラインシュリンプは孵化したばかりの段階では、金魚の稚魚と同じようにヨークサック(栄養のう)をお腹に持っています。この状態のブラインシュリンプをそのまま与えることで、含まれている豊富な栄養素を無駄なく稚魚に届けることができます。
さらに、ブラインシュリンプは高たんぱく・低脂肪で、赤虫と同様に成長期にぴったりの栄養バランスを持っています。加えて、体色を鮮やかにする働きのあるアスタキサンチンも含まれており、将来的な色揚げにも効果が期待できます。
「虫を卵から孵化させるなんて難しそう…」と思われるかもしれませんが、実は手順さえ覚えてしまえば初心者でも簡単にブラインシュリンプを沸かす(孵化させる)ことが可能です。
この記事では、実際の写真を交えながらブラインシュリンプの沸かし方のコツも詳しくご紹介していきます。ぜひ挑戦してみてください。
孵化方法は2種類
金魚の稚魚用の生き餌として定番のブラインシュリンプは、孵化方法には主に以下の2つのやり方があります。
1. 皿式(浅皿式)
特徴:手軽で準備が少ないが、少量向き
平らな容器に薄く塩水を張り、そこにブラインシュリンプの卵を入れて孵化させる方法です。
水深を浅く、水面を広くすることで、エアレーション(空気を送る装置)なしでも酸素が水中に供給されます。器具を使わずに簡単に始められるのが最大のメリット。
ただし、一度に孵化できる量が限られるため、少数の稚魚に給餌する場合に適しています。
2. ペットボトル式(エアレーション式)
特徴:やや準備は必要だが、大量に孵化できる
500ml前後のペットボトルなどに塩水を入れ、ブラインシュリンプの卵を加えたうえでエアレーション(空気を送る)を行って孵化させる方法です。
酸素供給のためにエアポンプ、エアチューブ、分岐器具などが必要になります。
ペットボトルを加工する手間はありますが、一度に大量のブラインシュリンプを沸かすことができるため、多くの稚魚を育てている方におすすめです。
どちらの方法を選べばよい?
- 手間をかけず少量でよい場合 → 皿式
- たくさん稚魚がいる or 毎日多く使いたい → ペットボトル式
どちらの方法でも孵化には成功しますので、飼育方法、飼育数、環境にに応じて使い分けましょう。
孵化に必要なもの
皿式・ペットボトル式、どちらの方法でも共通して必要な道具は以下の4つです。
スポイト
孵化した稚エビ(ブラインシュリンプ)を水ごと吸い上げ、稚魚の水槽へ移すのに使います。
細口のスポイトがあると作業がしやすくなります。
塩
一般的な食塩で大丈夫ですが、できれば不純物(ヨウ素など)の少ない塩を使うとより安心です。
※水1リットルに対して塩30g(約3%)が目安です。
水
水道水でもOKですが、カルキ抜き(中和)しておくとブラインシュリンプの孵化率が安定します。
市販のカルキ抜き剤を使うか、汲み置きして半日〜1日経った水を使いましょう。
ブラインシュリンプエッグ
これは必須の素材です。
ペットショップやアクアリウム用品店、ネット通販で購入できます。できれば孵化率の高い信頼ブランド品を選ぶと安心です。
皿式での沸かし方

皿式でブラインシュリンプを孵化させる場合には、塩・水・卵・スポイトのほかに、平らな容器を用意する必要があります。
使用する容器は、プラスチック製、ガラス製、金属製など、素材にこだわる必要はありません。水を浅く張れる形状であれば、家庭にある使い捨て容器やトレイでも十分に代用できます。
また、使用する水については、必ずしもカルキ抜きをする必要はありません。
一般的にはカルキを抜いた水が推奨されることが多いものの、私自身は水道水をそのまま使って塩水を作り、問題なくブラインシュリンプを孵化させています。
今のところ孵化率が下がったと感じたことはなく、特に不具合も起きていません。
水質や地域差もありますが、最初は気軽に試してみて、自分の環境に合った方法を見つけると良いでしょう。
塩水を作る

ブラインシュリンプを孵化させるためには、まず塩水を作る必要があります。
基本的な比率は、水1リットルに対して塩20gです。あらかじめペットボトルで塩水を作っておくと、必要なときにすぐ使えて便利です。
皿式の場合は使用する塩水の量が少ないため、500mlのペットボトルを使うと扱いやすくなります。
この場合、水500mlに対して塩は10gを目安に溶かしてください。
塩水を皿に注ぐ
塩水が用意できたら、次にそれを皿式の容器に注ぎます。
使う容器の深さには注意が必要で、水深が深くなりすぎると酸素の供給が不十分になるおそれがあります。
目安としては水深1cm程度で十分です。容器の水面積が広ければ、より効率よく酸素が取り込まれます。
ブラインシュリンプエッグを入れる

最後に、塩水を注いだ容器にブラインシュリンプエッグを加えます。
この作業が完了すれば、あとは孵化を待つだけです。
なお、エッグを入れる順番については、塩水を注ぐ前でも後でも問題ありません。順序にこだわらず、自分のやりやすい方法で進めて大丈夫です。
水温をあげるために

ブラインシュリンプはやや低めの水温でも孵化しますが、できれば28度前後の温度があると理想的です。ただし、皿式の場合は容器にヒーターを直接入れることができないため、別の方法で加温する必要があります。
おすすめなのが、LED照明の上に容器を置く方法です。
LED照明は高温にはなりませんが、適度な熱を発し、その温かさが容器に伝わることで自然な加温効果が得られます。この方法であれば、ヒーターを使わずとも容器内の水温を程よく保つことができ、ブラインシュリンプの孵化にちょうどよい環境を作れます。
特に気温が下がりやすい季節でも、LEDの熱を利用すればおよそ24時間ほどで問題なく孵化させることが可能です。手軽で安全な方法として、ぜひ試してみてください。
ペットボトルでの沸かし方
ペットボトルを使ってブラインシュリンプを孵化させる場合、まずは簡単な加工が必要です。
ここでは500mlのペットボトルを例に説明します。
加工といっても難しいことはなく、エアレーション用のチューブを通す穴をキャップに開けるだけで完成します。

キャップの中央付近にカッターの刃先を使って小さな穴を開けます。
このとき無理に大きな穴を開けようとせず、軽く突き刺すような感覚でOKです。

これくらいに開ければOKです。

その後、ハサミの刃を閉じたまま差し込み、くるくると回転させながら穴を広げていきます。
目安としては、エアチューブがちょうど通るか、少し余裕を持って入るくらいのサイズにするとよいでしょう。

穴が適度な大きさに広がったら、キャップの内外に残った切れカスをきれいに取り除いてください。

切れ端が残っていると、チューブの挿入や使用中に支障が出ることがあります。
この作業が終われば、ペットボトルの加工は完了です。
自作とはいえ、数分で済む簡単な作業なので、初めての方でも安心して取り組めます。
塩水を用意
ペットボトルでブラインシュリンプを孵化させるには、まず塩水を準備します。
水の量は500mlが目安で、これに対して塩を10g加えます。ペットボトル内でエアレーションを行うため、水はボトルの八分目程度にとどめておくのがちょうど良い量です。
塩を加えたら、しっかりと混ぜて完全に溶かしましょう。ただし、キャップにはエアチューブ用の穴が開いているため、混ぜる際には指などでしっかりと押さえ、こぼさないように注意してください。
エッグを入れる
次にブラインシュリンプエッグを加えます。
皿式と違ってペットボトル式ではエアレーションを使うため、酸素が十分に供給され、一度に多くのエッグを孵化させることが可能です。
我が家では稚魚の数が多いため、1回の孵化で小さじ2杯分、つまり約2gのエッグを使っています。
この量は皿式では到底処理できない量ですが、ペットボトルでエアレーションを行うことで安定した孵化が期待できます。
大量に稚魚を育てている場合には、非常に効率の良い方法です。
エアレーションは底で

ペットボトルでエアレーションを行う際には、塩水がしっかりと循環するようにチューブの設置位置に注意が必要です。必ずチューブの先端がボトルの底に届くようにセットしてください。
チューブが途中で止まっていると、ボトルの上部だけしか水が動かず、下の方には酸素が行き渡らなくなってしまいます。その結果、特に大量のブラインシュリンプエッグを入れている場合には、孵化率が低下する原因になります。
チューブを底までしっかり伸ばすことで、ボトル内の塩水全体に酸素が均等に供給され、効率的な孵化が期待できます。
また、エアレーションの強さについては、やや強めを意識しましょう。
とはいえ、ペットボトルが揺れるほどの激しいエアーは必要ありません。エッグがボトル内でしっかりと舞っている状態であれば、十分な酸素供給ができています。
適切な気泡量を維持し、安定した環境を整えてあげることが孵化成功のポイントです。
加温は難しい
ペットボトルでブラインシュリンプを孵化させる場合、加温が難しいのが悩みどころです。
LED照明の上にボトルを置く方法もありますが、照明が接している部分の面積が小さいため、どれだけ効果的に加温できているのかは正直なところ分かりません。
また、ヒーターを使っている水槽や容器の中にペットボトルを浮かべるという方法もありますが、ボトルが転倒するリスクがあるため、しっかり固定できるのであれば良いものの、やや不安が残ります。
もし日当たりの良い場所があれば、日光を利用して加温するのも一つの手です。自然の熱を活用できれば、温度の確保は比較的簡単になります。
ちなみに、私のところでは特別な加温は何も行っておらず、ただそのまま室温で孵化を待っています。それでも、24時間ほど経過すれば全体の半分以上が孵化しており、48時間もすればほぼすべてのブラインシュリンプがしっかりと孵化しています。
加温が難しい環境でも、時間をかければ十分に対応できるケースもあるということですね。
孵化後の与え方とコツ

ブラインシュリンプが孵化すると、オレンジがかったピンク色の小さな生き物が水の中に現れます。これが稚魚の餌として使えるブラインシュリンプです。

彼らには光に集まる習性があるため、採取の際にはその性質をうまく活用します。
たとえば、LED照明の近くにボトルを置くと、光に引き寄せられてブラインシュリンプがボトルの底に集まり、逆に水面には孵化後に残った卵の殻が浮いてきます。
この状態になれば、底にたまったブラインシュリンプだけをスポイトで吸い上げることができ、効率よく餌だけを取り出せます。光をうまく使って一点に集めるのがコツです。
飼育水で濾す

スポイトで吸い上げたブラインシュリンプは、まだ濃い塩水に浸った状態なので、そのまま稚魚に与えるのは適していません。
与える前に、塩分をしっかり取り除く必要があります。
私が行っている方法では、お茶パックをろ紙として利用しています。これを切り取ったペットボトルの底など、ちょうどよくはまる容器の上にセットして、ろ過の準備を整えます。

ブラインシュリンプをお茶パックに移したら、スポイトで飼育水を吸い取り、上からゆっくりとかけて塩水を洗い流します。
こうすることで、ブラインシュリンプだけが飼育水に馴染んだ状態になります。

その後、お茶パックごと飼育水に浸せば、準備完了です。ろ紙からブラインシュリンプが自然に出てくるので、稚魚に安全に与えることができます。

与えたブラインシュリンプは、淡水の中でもしばらく活発に泳ぎ回りますので、稚魚が追いかけながら食べやすくなります。
もし孵化殻が一緒に混ざってしまっても、水面に浮かぶため特に問題はありません。
仮に稚魚が殻を口にしてしまっても、多くの場合は自然に吐き出すので、あまり神経質になる必要はありません。
与える回数
ブラインシュリンプの孵化は、慣れてしまえば決して難しい作業ではありません。
無事に孵化したあとは、なるべく早めに稚魚に与えることが大切です。理想としては孵化後すぐに与えるのが良く、遅くとも2日以内には使い切るようにしましょう。
与える回数は、1日に4回ほどが目安です。
一度に与える量は、稚魚が数分以内に食べきれる程度に調整します。稚魚はまだ餌を食べることに慣れていないうえ、ブラインシュリンプは一定時間動き回るため、食べきるまでに少し時間がかかることもあります。
そのため、最初のうちは様子を見ながら量を調整し、「このくらいがちょうどいい」という感覚をつかんでいくことが重要です。
とはいえ、多少多めに与えてしまっても大きな心配はありません。稚魚は非常に食欲旺盛なので、余った分もきちんと食べてくれることがほとんどです。
沸かし方と与え方まとめ
ブラインシュリンプの沸かし方と与え方まとめ
ブラインシュリンプの孵化には、エアレーションを使わない「皿式」と、エアレーションを使う「ペットボトル式」の2つの方法があります。
- 皿式:準備が簡単で手軽に始められますが、一度に孵化できる量は少なめです。少数の稚魚を育てている場合におすすめです。
- ペットボトル式:エアレーションの準備やペットボトルの加工が必要ですが、一度に大量のブラインシュリンプを孵化させることができます。多くの稚魚を育てている場合に適しています。
水温が高いほど孵化は早まり、28度前後であれば約24時間で孵化します。加温にはLED照明の熱や日光を利用する方法もありますが、安定した加温が難しい場合は時間に余裕を持って孵化を待ちましょう。
孵化したブラインシュリンプを稚魚に与える際には、濃い塩水に浸っているため、直接与えるのではなく、ろ紙(お茶パックなど)を使って塩分をしっかり落とす必要があります。
塩分除去の流れ
1. ブラインシュリンプをろ紙に受ける
2. 飼育水を上から注いで塩分を洗い流す
3. ろ紙ごと飼育水に浸してから与える
与える量は、稚魚が数分で食べきれる程度に抑え、1日に4回ほどに分けて与えるのが理想的です。ブラインシュリンプは孵化してから時間が経つと栄養価が落ちるため、遅くとも孵化から2日以内に使い切るようにしましょう。